2012 年 29 巻 4 号 p. 289-292
乳癌組織のエストロゲンレセプター(ER;estrogen receptor)の発現量は内分泌療法や化学療法の奏効性や予後などの生物学的特性に関与する。乳癌組織のERの発現調節に関しては,ER遺伝子のメチル化やER蛋白のユビキチン化による分解などの報告があるが,臨床的に重要であるものは未だ見出されていない。最近,ERのmRNA 3’末端非翻訳領域に結合してERのmRNAと蛋白発現を抑制するマイクロRNA(microRNA)が報告された。われわれは乳癌組織におけるこれらERのmRNAに直接結合するmicroRNAの発現を定量的RT-PCR法により検討して,ERの蛋白発現や予後に関与するmicroRNAを見出した。さらに最近,ER陽性乳癌の生物学的特性に関与すると考えられるmicroRNAとその標的遺伝子を同定し,これらが治療標的あるいは薬物療法の感受性のバイオマーカーとして有用であると推測している。