日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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特集2
乳癌治療の基礎研究を臨床へ―トランスレーショナルリサーチの実際―
藤森 実藤田 知之西村 基越川 佳代子名倉 直彌天野 純谷口 俊一郎
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2012 年 29 巻 4 号 p. 298-300

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抄録

トランスレーショナルリサーチの必要性が提唱されて久しいが,癌治療における基礎研究の成果を臨床の場に橋渡しした実例を紹介する。われわれは1970年代から研究が始まった固形癌の嫌気的環境を標的とした嫌気性菌ベクターの基礎実験をもとに,組換えビフィズス菌製剤による新規腫瘍選択的治療薬の開発研究を行っている。ヒト常在菌であるBifidobacterium longumB. longum)菌を担癌動物に静脈内全身投与すると腫瘍組織でのみ特異的に集積・増殖することを見出し,Prodrug/Enzyme療法に用いられるCytosine Deaminase遺伝子を導入した組換えB. longum菌を作製した。ヒト乳癌細胞株移植ヌードマウスの治療実験を施行した結果,腫瘍内局所でのみ高濃度の5-FUが検出され腫瘍縮小効果が認められた。前臨床試験の結果,phase Ⅰ/Ⅱaプロトコールが米国FDAに承認され,臨床治験が開始されることとなった。

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