抄録
症例は56歳の女性。人間ドックの頸部超音波検査で甲状腺右葉に21×17×12mm大の被膜を伴う充実性腫瘍を指摘され,精査目的に当科紹介となった。穿刺吸引細胞診では,好酸性物質を入れ,核が偏在した印環細胞様の腫瘍細胞を認め印環細胞型甲状腺濾胞腫瘍を疑った。画像上,腫瘍の境界が一部不明瞭のため濾胞癌が否定できず甲状腺亜全摘切除術を施行した。病理組織検査では,腫瘍は多結節状で,被膜を有し,コロイドを入れた濾胞構造とともに印環細胞型の腫瘍細胞の増生を認めた。細胞質内の好酸性物質はサイログロブリン染色陽性,核はTTF-1陽性であり原発性腫瘍と診断した。明らかな血管浸潤の所見はなかったものの,腫瘍細胞の被膜浸潤を示唆する所見を認めた。以上の所見から印環細胞型甲状腺微少浸潤型濾胞癌と診断し,現在経過観察中である。本疾患は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する。