抄録
症例は69歳,男性。2年前に,近医で甲状腺腫を指摘され経過観察されていたが,サイログロブリン(Tg)が徐々に上昇し,甲状腺精査目的で当院に紹介受診となった。初診時の血液検査でTg 2,430ng/mLと異常高値を示し,超音波検査で2cm大の石灰化を伴う腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診の結果,濾胞性腫瘍が疑われ,甲状腺右葉切除を施行した。病理組織学的には微少浸潤型甲状腺濾胞癌であったが,術後に転移検索でCT・MRI・骨シンチ・PET/CTを行ったところ,前頭骨と胸椎に多発骨転移を認めた。すぐに甲状腺補完全摘を施行し,椎弓切除による減圧と椎体固定術を行った。また,放射線外照射とゾレドロン酸水和物の投与に加えて,131I内用療法を施行した。微少浸潤型甲状腺濾胞癌の骨転移症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。