日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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Print ISSN : 2186-9545
特集2
「特集2.困難な褐色細胞腫への対処」によせて
菊森 豊根松田 公志
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2014 年 32 巻 1 号 p. 18

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抄録

褐色細胞腫は通常,狭義の副腎髄質原発腫瘍と,傍神経節由来の傍神経節腫(paraganglioma)を指して使用されている。比較的稀な腫瘍で,高血圧の精査の過程で発見される場合や,特有な臨床症状を認めずいわゆる偶発腫瘍として発見される場合が多い。カテコラミンを過剰分泌することが多く,術前から周術期にかけて特殊な対応が必要である。大部分が良性腫瘍であるが,一部に再発をきたしたり,発見時に周囲への浸潤,遠隔転移を認めるなど悪性腫瘍としての振る舞いをみせるものがある。そのような場合でもカテコラミン過剰状態を是正するために外科的な減量が必要になることなど通常のsurgical oncologyの方針とは大きく異なる。傍神経節腫は,副腎原発の狭義の褐色細胞腫と比較して,周囲への浸潤をしばしばきたし,悪性の頻度も高い。発生する部位が頸部から骨盤にわたり,影響を受ける臓器も多岐にわたる。合併切除が予想される臓器によって,協力を仰ぐ診療科も異なり,複数にわたる場合もある。それらの場合には,内分泌外科医,泌尿器科医は手術進行の指揮官としての役割を果たす必要がある。症例数も少なく一般臨床医が遭遇することは比較的稀だが,その中でも,今回は,①大きな腫瘍や大血管との関係が複雑で通常の腹腔鏡手術では困難な症例に対する後腹膜到達法での手術,②周囲臓器への浸潤を伴う腫瘍の手術,③褐色細胞腫クリーゼ症例の対処法,④再発をきたした悪性褐色細胞腫へのCVD療法と⑤MIBG療法を取り上げた。この特殊な病態に対する外科,薬物そして放射線治療の各専門家からの総説が今後の治療の参考になれば幸いである。

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