日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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Print ISSN : 2186-9545
特集2
気管の再生医療
大森 孝一
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2017 年 34 巻 2 号 p. 118-122

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抄録

気管や輪状軟骨に悪性腫瘍や狭窄性疾患を生じると,病変の切除後に気道を再建する必要がある。既存の気道再建外科として,気管端々吻合,自己組織の移植などがあるが,術後管理や合併症,複数部位や複数回の手術侵襲,移植片の移動や吸収などの課題がある。

1990年代になって組織工学が登場し,臓器再生の三要素は足場,細胞,調節因子とされる。著者らはコラーゲンを足場としポリプロピレンで補強した生体内組織再生誘導型の人工気管の有効性,安全性を検証した上で,輪状軟骨と頸部気管の部分欠損の再建に臨床応用し,現在は実用化のための医師主導治験を実施している。選択基準は既存治療で気管孔を閉鎖できない患者と,悪性腫瘍などで気管切除(気管軟骨の1/2以上かつ3輪以上)が予想される患者である。

人工気管は非吸収性材料を使用しているため小児に適応がない。将来的には吸収性材料からなる新規人工気管や軟骨の再生医療技術の開発が望まれる。

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