2017 年 34 巻 3 号 p. 170
腎性副甲状腺機能亢進症は,慢性腎臓病で問題となる骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の代表的合併症であり,内分泌外科領域の重要な臨床課題のひとつである。しかしながら,カルシウム受容体作動薬であるシナカルセトが2007年に我が国で認可されて以来,その高い奏効性から,外科医の腎性副甲状腺機能亢進症の治療に対する意識の変化や混乱が生じてきたと言わざるをえない。またシナカルセト以降もあらたな活性型ビタミン剤,P吸着剤やカルシウム受容体作動薬が登場し,さらに腎性副甲状腺機能亢進症に対する治療ストラテジーは,今後も連続的に変化していく可能性がある。
このような状況で我が国における外科的治療(いわゆるPTx)の施行症例数は,近年劇的に減少した。しかしながら,治療法としてのPTxの優位性は,エビデンス的に依然として確立されている。そこで今回,多くは外科医である会員の先生方に腎性副甲状腺機能亢進症について,今どのような状況にあるかを再認識していただける機会をと考え,本特集を企画し,腎性副甲状腺機能亢進症の治療経験が極めて豊富な,そして日本を代表するエキスパートの先生方にそれぞれ内科的あるいは外科的視点から執筆していただいた。
この特集が会員の先生方の腎性副甲状腺機能亢進症への理解をさらに深めるものになるならば,これに勝る幸せはない。