日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
34 巻, 3 号
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会告
巻頭言
目次
編集委員会
特集1
  • 杉野 公則
    2017 年34 巻3 号 p. 147
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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  • 中野 賢英, 福成 信博, 坂上 聡志, 西川 徹, 相田 貞継
    2017 年34 巻3 号 p. 148-153
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    医療の技術革新が進む中で,甲状腺濾胞性腫瘍はいまだその診断が非常に難しい疾患の一つである。病理学的診断方法の特殊性もあり,確立した術前診断方法は得られていない。一方で,新しい技術の開発や様々な評価法の検討が,正診率の向上に寄与していることも事実である。画像診断はその中でも重きを置かれる分野であり,超音波検査を筆頭に多くの知見が得られているが,現状では,画像所見だけではなく,臨床経過,細胞診結果,サイログロブリン値などの臨床検査結果を踏まえて総合的に検討し,治療方針を判断する必要がある。今後より正確な診断が可能となるよう,さらなる知見の積み重ねが期待される。

  • 覚道 健一, 佐藤 伸也, 山下 弘幸
    2017 年34 巻3 号 p. 154-159
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    第3版WHO分類,第7版甲状腺癌取り扱い規約では,境界悪性/前駆腫瘍の概念は導入されていない。WHO分類第4版(内分泌腫瘍)では,新たに境界悪性病変(前駆腫瘍)が甲状腺腫瘍分類に採用された。UMP(uncertain malignant potential)とNIFTP(Non-Invasive Follicular Thyroid neoplasm with Papillary-like nuclear features)が,境界悪性/前駆腫瘍として,良性でもない,悪性でもない腫瘍と定義された。これらの腫瘍は,病理医間で診断の不一致が起こりやすい病変であり,摘出により再発の可能性はほとんどない,癌としての治療が必要のない病変とされた。細胞診では,『意義不明』,『濾胞性腫瘍』,『悪性疑い』と診断される確率が高く,細胞診で濾胞性腫瘍と診断された場合,画像で腫瘍被膜浸潤,甲状腺被膜浸潤,転移を疑う所見がなければ,広範浸潤型濾胞癌,脈管浸潤を示す濾胞癌,低分化癌である可能性は極めて低い。すなわち画像上良性の細胞診濾胞性腫瘍結節は,経過観察も選択肢となる。今まで日本の外科医が実践してきた甲状腺結節の診療方針が間違っていないことを確かめることができた。しかし米国甲状腺学会ガイドラインでは,境界悪性腫瘍(NIFTP,WDT-UMP,FT-UMP)は摘出し病理組織学的に浸潤転移がないことを確認しなければならない病変(Surgical Disease)としている。

  • 伊藤 康弘, 宮内 昭
    2017 年34 巻3 号 p. 160-165
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    甲状腺濾胞癌は,乳頭癌の次に頻度の高い甲状腺濾胞細胞由来の癌である。乳頭癌と異なり,リンパ節転移や周辺臓器への浸潤は少ないが,反面遠隔転移や遠隔再発が多い。濾胞癌の予後不良因子としては手術時の遠隔転移(M1),低分化成分の存在(50%以上),浸潤度(広汎浸潤型),年齢(再発予後不良因子は20歳未満と45歳以上,生命予後不良因子は45歳以上)が挙げられる。濾胞癌は術前の細胞診では診断がつきにくく,濾胞性腫瘍という診断の元に初回手術は通常,片葉切除が行われる。しかしM1症例や組織学的に予後不良因子をもつ症例に対しては,病理診断がついたあとで,補完全摘や症例によっては放射性ヨウ素を用いたアブレーションが推奨される。

  • 光武 範吏
    2017 年34 巻3 号 p. 166-169
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    甲状腺濾胞性腫瘍とは,濾胞腺腫と濾胞癌を併せたものをいう。両者の鑑別は明らかでないことがあり,少なくとも一部は連続した病態であると考えられる。また,濾胞性腫瘍と乳頭癌の濾胞型亜型の鑑別も難しいことがある。濾胞性腫瘍では,細胞内シグナル伝達経路のうちPI3K-AKT経路の活性化が重要であると考えられている。このシグナル経路を活性化する遺伝子異常として,RAS変異(特にNRASコドン61),PTEN変異・欠失,PIK3CAの増幅などがみられる。また,染色体再配列PAX8/PPARγが検出されることもあり,これもおそらくPI3K-AKT経路の活性化に関与しているとされる。一般的にはこれらの遺伝子異常には重複がみられない。これらの変異は,頻度が低いものの濾胞腺腫でも検出されるが,その臨床的意義は不明である。さらに追加で生じるTERTプロモーター変異は,高悪性度・予後不良と関連する。

特集2
  • 日比 八束
    2017 年34 巻3 号 p. 170
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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  • 稲熊 大城
    2017 年34 巻3 号 p. 171-175
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    腎性副甲状腺機能亢進症(Renal Hyperparathyroidism;RHPT)は,透析患者を含む慢性腎臓病(Chronic kidney Disease;CKD)の重要な合併症である。RHPTの発症には,リンの体内への貯留によるFibroblast Growth Factor 23(FGF23)の上昇がトリガーとなっていることがわかってきた。FGF23は,リン利尿を促す以外にビタミンDの活性化を抑制し副甲状腺ホルモン(Parathyroid hormone;PTH)を上昇させることや心肥大をもたらす可能性が示唆されている。RHPTは,腎機能障害環境下では徐々に進行するが,それは副甲状腺のサイズに反映される。初期の段階ではびまん性過形成であるが,進行すると結節性過形成から単一腺腫に至り,内科的治療に抵抗することがわかっている。RHPTの症状あるいは所見には骨関節症状に加え,心機能抑制,精神神経筋症状があり,さらに血管石灰化が重要であり,血清リン,カルシウムあるいはPTH濃度の上昇が進展に関与している。血管石灰化は心血管病発症のリスク因子であり生命予後にも関連しており,今後の対策が待たれる。

  • 小岩 文彦, 笹井 文彦, 佐藤 芳憲
    2017 年34 巻3 号 p. 176-181
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    腎機能の低下に伴って生じる生体のカルシウム(Ca),リン(P)代謝異常に対する防御反応として副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌され,二次性副甲状腺機能亢進症が発症,進展する。軽度例が多い保存期CKDではP制限食や経口活性型ビタミンD製剤が対策となる。透析期になると副甲状腺機能は進行するため,静注ビタミンD製剤が主体となるが,高用量に伴うCa負荷が臨床上問題となり,投与量が制約されることも多かった。

    Calcimimetics製剤はPTHだけでなく血清Caも低下させることから,活性型ビタミンD製剤との併用によりCa負荷を軽減しながらPTH低下効果を得ることが可能となる。国内外の臨床研究により副甲状腺機能管理以外に心血管系石灰化や骨折,死亡などのアウトカムの向上が示された。国内では経口,静注製剤が使用可能で,二次性副甲状腺機能亢進症の内科管理における重要な選択枝となりつつある。

  • 渡邊 紳一郎, 三上 洋, 副島 一晃, 町田 二郎, 副島 秀久
    2017 年34 巻3 号 p. 182-186
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    2008年にわれわれの施設も参加した「二次性副甲状腺機能亢進症に対するPTx研究会:PSSJ」が立ち上がった。その統計では,2006年に日本透析医学会からCKD-MBDに関するガイドラインが発表されるとPTx症例数が増加し,2007年には1,771例となった。その後2008年にシナカルセトが発売されると,PTx症例数が激減し,2015年には303例となった。さらに2017年にエテルカルセチドが発売され,その効果・副作用が今後明らかとなるとさらにPTxが減少する可能性がある。しかし,副作用などによりカルシミメティクスが使用できない症例および移植患者のHPTなどにより,一定数のPTxはなくならないと判断している。文献から,生命予後や医療経済においてはPTxの優位性は明らかと言ってもよい。以上を考慮し,今回,様々な病態の腎性HPTにおけるPTxの適応ついて検討した。

  • 一森 敏弘, 岡田 学, 平光 高久, 冨永 芳博
    2017 年34 巻3 号 p. 187-190
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    腎性副甲状腺機能亢進症の副甲状腺の局在診断のためには,第3咽頭囊から下副甲状腺が,第4咽頭囊からは上副甲状腺が発生し,下腺は移動距離が上腺より大きいため,存在する部位も広範となるということを理解しておく必要がある。術前画像診断の検査としては,US,CT,MRI,MIBIがある。現在われわれは,頸部PTxでは,US,MIBI SPECT/CTを,前腕移植腺再発手術では,US,MRIを採用しているが,さらに検討は必要である。4腺確認できたとしても満足することなく,常に過剰腺はないかと疑ってPTxに臨むことは重要である。また,小さな副甲状腺を画像で検出することが困難な現時点では,胸腺舌部を可及的に切除し,頸部残存腺による再発をできるだけ少なくする努力が肝要であると考えている。

症例報告
  • 林 昌俊, 栃井 航也, 丹羽 真佐夫, 高橋 啓, 川村 紘三, 小久保 健太郎
    2017 年34 巻3 号 p. 191-194
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    症例は72歳,女性。健康診断で前頸部腫瘤を指摘され近医に受診,当院に紹介された。前頸部左側よりに超母指頭大,弾性硬な腫瘤を触知した。穿刺吸引細胞診はclass V,乳頭癌疑いで甲状腺全摘術,D2b郭清を施行した。病理結果はUICCによる分類でpT3,pN1b,M0,stageⅣAであった。術後,第3病日に突然の呼吸困難が出現したが約30分で消失した。第4病日に不整脈が出現,12誘導でⅡ,Ⅲ,aVF,V2~6に陰性T波を認めた。冠動脈造影では有意狭窄を認めず,左室造影でたこつぼ様の心尖部の無収縮を認め,たこつぼ心筋症と診断した。胸部症状なく,駆出率(EF)が55%あり,経過観察し術後第11病日に退院した。たこつぼ心筋症発症後第21病日にはEF71%に改善した。本疾患は多種のストレスとの関連が指摘されており甲状腺周術期にも起こりうる疾患である。甲状腺周術期に循環器合併症を認めた場合には念頭に置く必要があると考えられた。

  • 松尾 知平, 池田 達彦, 河村 千登星, 佐々木 啓太, 高木 理央, 星 葵, 周山 理沙, 田地 佳那, 市岡 恵美香, 井口 研子, ...
    2017 年34 巻3 号 p. 195-199
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    根治切除不能な放射性ヨウ素内用療法(RAI)抵抗性の甲状腺癌患者に対してレンバチニブの保険適用が承認されたが,血液透析患者に対する適切な投与方法は不明確であり,有効性や安全性についても未だ報告はされていない。

    今回われわれは血液透析中の根治切除不能な甲状腺癌患者に対してレンバチニブを使用した1例を経験した。本症例では過去の文献を踏まえレンバチニブの初回投与量を14mg/日とした。有効性についてはday139の時点で腫瘍縮小率42%と治療効果を認めた。一方,安全性についてはGrade3の手足症候群・下痢・高血圧,Grade1・2の気管支出血・肺感染症・肝機能障害・血小板数減少・悪心・疲労感を認めたが適宜休薬・減量を行いレンバチニブの継続投与が可能だった。本症例の詳細な検討に安全性や初回投与量に関する文献的考察を加え報告する。

  • 藤井 慶太郎, 足立 将大, 飛田 忠道, 秋月 浩光
    2017 年34 巻3 号 p. 200-203
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    症例は70歳台,女性。幼少期より完全内臓逆位を指摘されていた。超音波検査で30mm大の甲状腺腫瘍を指摘され,悪性も否定できず手術方針となった。

    術前の画像評価では,血管分岐形態に異常は認めず,非反回下喉頭神経の存在も否定的であった。

    甲状腺左葉峡切除術が施行された。左反回神経は傍食道やや外側にて確認され,温存した。術後,反回神経麻痺はなかった。病理では腺腫様結節(腺腫様甲状腺腫)であった。

    頭頸部領域で完全内臓逆位が問題になることはあまりないが,反回神経の走行の特徴が左右逆になることと,血管分岐形態の異常がある際には非反回下喉頭神経の存在を念頭に置き慎重に手術操作を行うべきである。

  • 和久 利彦, 園部 宏
    2017 年34 巻3 号 p. 204-208
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/16
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    症例は82歳男性。近医での左肘皮下腫瘤生検で肺腺癌あるいは甲状腺癌の転移が疑われ当院へ紹介。血液検査では白血球22,820/μlと好酸球34.4%のみ異常値であった。頸部超音波検査で4cmの甲状腺腫瘤を認め,穿刺細胞診の結果は甲状腺癌疑いであった。術前CT検査では,甲状腺右葉から峡部を主体として上縦隔に続く4cm大の腫瘤,左腋窩・胸部下部食道傍リンパ節腫大,皮下・筋内・左腎背側腫瘤を認めた。多臓器転移を伴う甲状腺癌との術前診断で手術を行い甲状腺未分化癌の診断を得た。術後1カ月でLenvatinibを開始し,術後3カ月で白血球数・好酸球数は正常化した。術後10カ月のCT検査では,皮下・筋内・左腎背側腫瘤は不明瞭化し,胸部下部食道傍リンパ節は縮小したが,左腋窩リンパ節や右肺下葉陰影の出現がみられた。同時に白血球数・好酸球数の上昇もみられたが,白血球数・好酸球数が病勢を反映するマーカーになる可能性があると考えられた。

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