日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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Print ISSN : 2186-9545
症例報告
増大過程を追跡し得た縦隔内甲状腺腫例
橘 智靖折田 頼尚春名 威範小松原 靖聡直井 勇人田尾 裕之水谷 尚雄西﨑 和則
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2019 年 36 巻 4 号 p. 250-254

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抄録

今回われわれは縦隔内甲状腺腫症例において,過去の画像所見から腫瘍の増大過程を確認し得たので経過および治療について報告する。症例は72歳,女性。近医内科の胸部単純写真にて縦隔に異常陰影を認めたため,当科を紹介され受診した。同院では胸部単純写真を11年前に,また8年前からは年に1回撮影していた。画像所見上,11年前気管の偏位はわずかであったが,縦隔の腫瘤影は徐々に気管分岐部付近まで下降した後,側方への増大を認めた。CTでは甲状腺右葉から縦隔へと進展する境界明瞭な腫瘤影の下端は気管後方,大動脈弓下端レベルまで及んでいた。術中,腫瘍を縦隔側から頸部側へ脱転することにより頸部アプローチのみで摘出することができた。術後反回神経麻痺は認めなかった。頸部アプローチにおいては腫瘍下方の盲目的剝離を要するため,下方への増大傾向を示す縦隔内甲状腺腫は手術を検討する必要があると考えた。

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