2020 年 37 巻 3 号 p. 187-191
術中神経モニタリング(IONM)により,甲状腺・副甲状腺手術中の反回神経の同定と機能監視,手術終了時における機能確認が可能となった。しかし,反回神経温存のコツはその解剖の理解と愛護的な操作であることは変わらない。反回神経はしばしば喉頭外で分枝するが声帯運動枝は最も前方を通ること,Berry靭帯付近での牽引は麻痺の原因となることを知ったうえで,適切にIONMを使用することが重要である。IONMはまた,非反回神経の迷走神経からの分岐点の同定,右縦隔甲状腺腫の場合の神経の走行確認などにも役立つ。進行甲状腺癌や再手術例では必須のデバイスであり,両側反回神経の剝離操作を要した場合の気管切開の必要性判断にも活用できる。国際神経モニタリング研究グループ(INMSG)は2018年にガイドラインを発表し,IONMを用いた浸潤性甲状腺癌における反回神経の取扱いや二期的手術の適応について具体的な手順を示した。