日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
37 巻, 3 号
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会告
目次
編集委員会
特集1
  • 佐藤 伸也
    2020 年 37 巻 3 号 p. 155
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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  • 福原 隆宏
    2020 年 37 巻 3 号 p. 156-160
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    耳鼻咽喉科は耳鼻科と頭頸部外科に分かれており,甲状腺・副甲状腺疾患は頭頸部外科が治療を担当する。しかし,診療には内分泌の知識が要求されるため,頭頸部外科医の中でも専門医を取得している医師は限られる。このため,一般耳鼻科や開業医などで,術前の診断や術後のフォローを行うのは難しい。一方で,甲状腺・副甲状腺疾患術後の主な合併症である音声障害に対しては高い専門性を有する。音響分析による音声評価や喉頭ファイバースコピーによる声帯評価は日常的に行う検査であり,気流阻止法による声帯閉鎖不全の定量評価やピッチレンジ検査,ストロボスコピーなども行う。手術に関しては,一期的・二期的な音声改善術,または気管や喉頭へ浸潤する症例において音声を温存しながらの手術加療を得意とする。

  • 児玉 ひとみ, 中村 靖, 杉浦 良子, 徳光 宏紀
    2020 年 37 巻 3 号 p. 161-165
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    内分泌外科学とは甲状腺・副甲状腺・副腎・膵消化管などの内分泌腺及びその関連臓器に生じる外科的疾患の病態,診断ならびに治療を研究する学問と定義されている。実際の内分泌外科診療は疾患頻度からいえば甲状腺・副甲状腺疾患が多くを占めるが,内分泌疾患の特異性として,多発性内分泌腫瘍症Multiple Endocrine Neoplasia(MEN)の一疾患である可能性がある。MENは希少であるために限られた医療施設でしか経験することは難しいが,学会や専門医制度の中で学び,診断できる力をつけることは重要である。認定施設の地域の偏在が問題となっているが,地域の実情にあった専門医の教育体制を整備し,地域へ質の高い専門的医療を届けることを実行していかなければならない。われわれは一般臨床病院で乳腺内分泌外科を標榜して11年の間に甲状腺疾患341例,副甲状腺疾患115例,乳癌673例の手術を行った。その間内分泌外科専門医1名,乳腺専門医2名が誕生し,地域医療に貢献してきた。内分泌外科学会は多領域の医師が参加しており,診療科の垣根を超えた貴重な意見を聞くことができ,違った視点で疾患をみることができる。新専門医制度ではこの多様性を強みとし,内分泌外科のアイデンティティーを各領域で共有し,サブスペシャルティーとしての存在価値を高め発信していく必要がある。

  • 渡邊 紳一郎, 三上 洋, 副島 秀久
    2020 年 37 巻 3 号 p. 166-169
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    泌尿器科は尿路結石や血液浄化療法を介して,副甲状腺疾患とのかかわりは深い。医中誌で,副甲状腺×泌尿器科で検索すると,2009~2019年に226編がhitし,原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)関連37編,二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)関連149編,腎移植関連22編,副甲状腺癌3編などであった。尿路結石はCa結石が90%以上であり,PHPTはその5%で稀ではなく,血清Ca,P値に関心を持つことが重要である。泌尿器科ではPHPTに比してSHPTの経験数が多い。Ca受容体作動薬によりPTxは減少しているが,PTxの効果は劇的で,医療経済的にも優位性は明らかである。Ca受容体作動薬により隠れていたHPTが腎移植後に明らかとなり,移植腎尿路結石や高Ca血症の治療に苦慮することも多い。今後もPTxの効果を発信していきたい。

特集2
  • 中野 正吾
    2020 年 37 巻 3 号 p. 170
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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  • 鈴木 眞一, 松本 佳子, 塩 功貴, 長谷川 翔, 岩舘 学, 鈴木 聡, 中野 恵一, 水沼 廣
    2020 年 37 巻 3 号 p. 171-175
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    甲状腺・副甲状腺外科ではいまでも反回神経麻痺が最も特徴的な合併症であり,残念ながら現在においても完全には避けられない合併症の一つである。術中神経モニタリング(intraoperative nerve monitoring;IONM)は甲状腺手術に対して本邦で保険適応になり,広く利用されるようになってきた。セットアップではまずEMG(electromyography)気管内チューブの挿管と適切な位置での固定,さらに種々電極の刺入とコードの接続固定があり,術前から術後まで一貫して外科医師ないし臨床工学技士,看護師などのメディカルスタッフが管理することが望まれる。さらにEMG気管チューブの管理や筋弛緩剤を入れないなど麻酔科医との連携,情報共有が重要である。

  • 安藤 孝人, 舛岡 裕雄, 木原 実, 小野田 尚佳, 宮 章博, 宮内 昭
    2020 年 37 巻 3 号 p. 176-181
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    甲状腺手術中に神経モニタリング装置(Intraoperative neuromonitoring:IONM)を使用する中で術中の波形消失(Loss of Signal:LOS)に遭遇することがある。LOSは反回神経損傷を示唆する可能性があり,外科医には適切な評価と対応が求められる。2011年にInternational IONM Study Groupから反回神経モニタリングに対するガイドラインが発表され,2018年に第2版が示された。ガイドラインではLoss of Signal(LOS)の定義,具体的なトラブルシューティングが示されている。特に第2版では両側甲状腺切除時において一側LOSとなった際に,対側甲状腺切除を二期的に行うStaged Surgeryを強く推奨していることが特徴である。本稿はガイドラインに基づいてLOSの評価と対応について概説する。ただし,本邦と海外では手術対象疾患を含め甲状腺診療における医療事情が大きく異なるため,実際の対応は個々の症例の背景に応じて対応を考える必要がある。

  • 舛岡 裕雄, 宮内 昭
    2020 年 37 巻 3 号 p. 182-186
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    甲状腺切除術において最も重要な合併症の一つに反回神経麻痺があるが,上喉頭神経外枝麻痺も,甲状腺上極の血管処理中に容易に起こり得る合併症である。上喉頭神経外枝が麻痺すると輪状甲状筋の収縮が障害され,大声や高音の発声が困難となる,発声音域が狭くなるなどの症状が出現する。近年,改良された術中神経モニタリング装置が普及するようになり,術中に上喉頭神経外枝を確認温存することが飛躍的に容易になった。上喉頭神経外枝の走行経路とその術中神経モニタリング方法について精通すること,および反回神経と同様に神経を意識した精細な手術手技により,安全確実に上喉頭神経外枝を温存できる。今後甲状腺手術を受けられる患者の声をできるだけ術前と変わりないようにするために,是非とも上喉頭神経外枝を温存する手技を習得していただきたいと考える。

  • 杉谷 巌
    2020 年 37 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    術中神経モニタリング(IONM)により,甲状腺・副甲状腺手術中の反回神経の同定と機能監視,手術終了時における機能確認が可能となった。しかし,反回神経温存のコツはその解剖の理解と愛護的な操作であることは変わらない。反回神経はしばしば喉頭外で分枝するが声帯運動枝は最も前方を通ること,Berry靭帯付近での牽引は麻痺の原因となることを知ったうえで,適切にIONMを使用することが重要である。IONMはまた,非反回神経の迷走神経からの分岐点の同定,右縦隔甲状腺腫の場合の神経の走行確認などにも役立つ。進行甲状腺癌や再手術例では必須のデバイスであり,両側反回神経の剝離操作を要した場合の気管切開の必要性判断にも活用できる。国際神経モニタリング研究グループ(INMSG)は2018年にガイドラインを発表し,IONMを用いた浸潤性甲状腺癌における反回神経の取扱いや二期的手術の適応について具体的な手順を示した。

  • 友田 智哲, 杉野 公則, 伊藤 公一
    2020 年 37 巻 3 号 p. 192-196
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    近年,甲状腺および副甲状腺の手術時に施行される術中神経モニタリングの周辺機器の開発がすすみ,2016年より迷走神経を持続的に刺激するAPSTM電極が使用可能となった。術中持続神経モニタリング(Continuous Intraoperative Nerve Monitoring:CIONM)と呼ばれる方法で,手術操作による神経への影響をその場で判断できる。神経の切断やクランプなどの分かりやすい神経障害の他に,神経が確実に温存され肉眼的に正常と思われる“思いがけない”神経麻痺の原因は牽引であることも分かってきた。牽引が原因の神経障害では,ダメージが軽いうちに術操作を中断すると,神経機能は速やかに改善する。CIONMを施行することにより,このダメージをすばやく検知し対応することにより,術後早期の声帯麻痺の頻度は減少し,理論的には両側声帯麻痺をかぎりなく0に近づけることが可能と考えられる。

  • 原 尚人
    2020 年 37 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    内視鏡下甲状腺手術には様々なアプローチが開発され,さらにロボット支援下手術の開発も進んでいる。そのいずれにおいても,通常開放手術と同様もしくはそれ以上に術中神経モニタリングは有用である。どのアプローチにおいても,ガイドラインに準じての術中神経モニタリング施行手順を守ることと,反応消失時の評価手順によるトラブルシューティングが最大の「こつ」である。アプローチによっては電極プローベの工夫が必要であるが,新たな開発が期待される。

原著
  • 小幡 和史, 宮田 遼, 黒瀬 誠, 近藤 敦, 高野 賢一
    2020 年 37 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    背景:甲状腺手術において副甲状腺機能温存は重要である。近年副甲状腺の自家蛍光特性が発見され,赤外観察カメラシステムでの検出法が報告されている。今回,甲状腺全摘術における副甲状腺同定・機能温存に対し,赤外観察カメラシステムの有効性を評価する。

    対象・方法:2019年4月1日から9月30日の期間で,当科で実施した甲状腺全摘術症例(平均年齢44.6歳,男性1例,女性9例)を対象とし,副甲状腺同定・機能温存に対する赤外観察カメラシステムの有効性を評価した。

    結果:赤外観察カメラシステムにより,病理学的に副甲状腺と同定しえたのは13検体中11腺(84.6%)で,手術4週後にカルシウム補正が 不要な症例は10例中8例であった。

    考察:赤外観察カメラシステムによる副甲状腺の術中同定は非侵襲かつ簡便な方法で,甲状腺全摘術後の副甲状腺機能温存において有用であり,副甲状腺を肉眼で同定するためのトレーニングツールとしての有効性が示された。

症例報告
  • 河村 千登星, 八代 享, 若木 暢々子, 周山 理紗, 三島 英行, 伊藤 吾子
    2020 年 37 巻 3 号 p. 208-212
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    切除不能な甲状腺癌に対し,2015年3月にレンバチニブが保険収載されて5年程度の間に,治療経過に伴う重篤な続発性気胸の副作用が国内で12症例報告されている(2018年10月時点)。甲状腺乳頭癌多発肺転移に対しレンバチニブを投与し,難治性両側気胸を発症した症例を経験したので報告する。症例は70歳女性。レンバチニブ投与開始前のCTで両肺の胸膜直下に肺転移を認め,投与継続に伴い病変の縮小,一部空洞化を認めた。投与開始から157日後に呼吸苦を主訴に当院受診し,右高度気胸を認め緊急入院した。その3日後に左高度気胸を認めた。両側とも胸腔ドレーンを留置したが,難治性であり最終的に呼吸不全で死亡した。レンバチニブ投与による気胸併発の割合は0.3%と稀であるが難治性のことが多く,胸膜や気管支周囲の病変には注意が必要である。治療経過中に肺転移巣の薄壁空洞化や囊胞を認めた場合,休薬・減量を検討する必要がある。

  • 和久 利彦
    2020 年 37 巻 3 号 p. 213-217
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/28
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    症例は74歳女性。近医より4cmの甲状腺左葉腫瘤精査で当院へ紹介。血液検査ではLDH,sIL-2Rは正常で抗Tg抗体価・抗TPO抗体価・Tgは高値であった。頸部USで甲状腺左葉に4cmの内部エコーレベルの低い腫瘤を認め,穿刺細胞診でMALTリンパ腫疑いであった。頸部~骨盤腔CTでは甲状腺左葉の腫瘤と左Ⅵリンパ節腫大を認めた。Ann Arbor分類Ⅱ期甲状腺MALTリンパ腫疑いで甲状腺全摘術+D2aを行った。病理組織学的には橋本病を背景にした限局期甲状腺MALTリンパ腫と甲状腺多発性微小乳頭癌が認められた。リンパ節には癌の転移やlymphoid cellの浸潤はなかった。術後1年が経過したが再発はない。診断と治療の両面から限局期甲状腺MALTリンパ腫に対して,甲状腺全摘術単独治療も治療選択肢の1つになる可能性があると考えられるが,甲状腺全摘術の短所にも注意を払う必要がある。

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