2022 年 39 巻 3 号 p. 161-164
CASTLE(carcinoma showing thymus-like element)は胸腺上皮性腫瘍に類似した組織像を呈する稀な腫瘍である。 甲状腺内の異所性胸腺組織または胎生期胸腺遺残組織を起源とし,甲状腺下極に発生し易い。50歳代の女性に多く,無痛性の頸部腫瘤や反回神経麻痺を伴う。組織学的に比較的境界明瞭な腫瘤を形成し,大型の充実性胞巣や島状構築を示し,リンパ球浸潤を伴うことが多い。細胞は多角形あるいは紡錘形で,大型の類円型核と明瞭な核小体を持つ。免疫染色ではCD5,Bcl-2,p63,サイトケラチン,c-kitなどが陽性となり,特にCD5は他の甲状腺悪性腫瘍との鑑別に有用である。治療の第一選択は根治切除であり,術後放射線照射や化学療法を追加する場合もある。扁平上皮癌や未分化癌と比較すると,CASTLEの発育,進展は緩徐であり,予後良好な症例が多い。