抄録
Hawkes過程を用いたイベント発生のモデル化はファイナンス分野でも近年注目されている.本研究では,日本における比較的長期の倒産履歴データを対象に,業種および企業規模に基づいて倒産発生イベントを複数のイベントタイプに分類し,そのうえで,多次元Hawkes過程を用いて倒産発生の伝播構造をモデル化する.Hawkes過程に付随する強度過程を特徴づける手法として,指数減衰型カーネル関数を仮定して最尤法で推定する従来からの手法に加えて,Embrechts and Kirchner (2018)によって提唱されたノンパラメトリックな推定法の適用を試みる.この二つの手法による 多次元Hawkes過程の強度過程の推定結果を Hawkesグラフ表現を用いた視覚化によって比較・考察を行い,Embrechts-Kirchner の推定法が多次元Hawkes過程を用いた倒産発生の伝播モデルに対して応用可能性があることを確認する.