Engle and Russell (1998)は約定間隔をモデル化したACDモデルを提案した.このモデルはマーケットマイクロストラクチャの観点から約定間隔の長さと情報の存在を実証分析するためのツールである.従来より約定時点のタイムスタンプが同じ情報は,“ゼロ約定間隔”としてモデルの推定からは除外されていた.しかし,近年の高速取引化で取引される高流動性銘柄では秒単位の約定データの場合,約半数の約定間隔がゼロになるという状態になっており,ゼロ約定間隔の取り扱い方法を工夫する必要があった.本研究ではミリ秒単位のデータを利用することで,秒単位のデータに比べてゼロ約定間隔を少なくした上で,トービットモデルの推定手法をACDモデルに応用するという新たな推定方法を提案する.日経平均先物と同じくミリ秒単位の仮想データを作成し,ACDモデルの数値実験を行った結果,ゼロ約定間隔を無視する従来の方法より,推定値の誤差が大きく改善されることが明らかになった.