ジャフィー・ジャーナル
Online ISSN : 2434-4702
18 巻
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 高 英模
    2020 年18 巻 p. 1-15
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/16
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    Engle and Russell (1998)は約定間隔をモデル化したACDモデルを提案した.このモデルはマーケットマイクロストラクチャの観点から約定間隔の長さと情報の存在を実証分析するためのツールである.従来より約定時点のタイムスタンプが同じ情報は,“ゼロ約定間隔”としてモデルの推定からは除外されていた.しかし,近年の高速取引化で取引される高流動性銘柄では秒単位の約定データの場合,約半数の約定間隔がゼロになるという状態になっており,ゼロ約定間隔の取り扱い方法を工夫する必要があった.本研究ではミリ秒単位のデータを利用することで,秒単位のデータに比べてゼロ約定間隔を少なくした上で,トービットモデルの推定手法をACDモデルに応用するという新たな推定方法を提案する.日経平均先物と同じくミリ秒単位の仮想データを作成し,ACDモデルの数値実験を行った結果,ゼロ約定間隔を無視する従来の方法より,推定値の誤差が大きく改善されることが明らかになった.

  • 佐久間 吉行, 横内 大介
    2020 年18 巻 p. 16-45
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/16
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    為替では,取引の活況具合に応じて,取引の発生が疎らな時間帯,密になる時間帯に分かれる為替取引のクラスタ現象や,相場でのリスクの増減に応じて,価格の変動が小さく推移する時間帯,急激な価格の上下変動が持続する時間帯に分かれるボラティリティクラスタリング現象が確認でき,相互に関連しあう様に見える.本論文では,為替ティックデータを用いて,指値や取引の発生間隔の粗密,量の増減,価格変動の増減の相互の関係を明らかにしたい.

    Cont et al.(2014)は,時系列データをもとに,指値注文の価格変動と量の関係を調査し,Shibata(2006)は,マーク付点過程データを用いて,取引の発生間隔と価格変動の関係を調査する.我々は,指値や取引の発生間隔と価格変動,量といった変量の関係に興味があるので,Shibata(2006)のモデルとCont et al.(2014)のモデルを統合することで,これらを同時に捉えることのできるモデルを構築した.

    そして,為替の取引発生の粗密から得られるクラスタ区分上で,指値や取引の発生間隔,量,価格変動の関係を調査した.本論文の貢献は,クラスタ区分上で,指値や取引の発生頻度と価格変動,価格インパクトなどの要約量の間の相関を確認したこと,時間軸を均等に区切ることで得られる30分等間隔の区分上では隠れて確認できない価格変動に伴う価格インパクトやデプスなどの動きを視覚化したこととなる.

  • 山本 零, 川代 尚哉, 栗田 昌孝
    2020 年18 巻 p. 46-62
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/16
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    本論文ではテキスト媒体として決算短信と会社四季報に着目し,それらの媒体から共通のテキストマイニング手法で投資情報を抽出することで,両媒体のテキスト情報の特性を比較してその投資情報としての価値を評価した.

    その結果,両媒体は企業の業績情報を示す類似のテキスト情報ではあるが,含まれている情報は異なっており,投資情報としても異なる効果を持つことが分かった.また両媒体のテキスト情報から抽出された投資情報は,既存の投資戦略とは異なる高い有効性を持ち,特に両媒体に含まれる数値情報の効果を除いても有効性が高い,つまりテキスト情報そのものに投資価値が含まれていることが分かった.これらの効果はサイズ,業種の要因を調整し,売買コストを考慮したものであり,本論文の分析で決算短信,会社四季報から抽出した投資情報は新しい超過収益の源泉になりえることが分かった.

  • 佐藤 正崇, 今井 潤一
    2020 年18 巻 p. 63-88
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/16
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    本研究では,マーク付き多次元Hawkes過程を用いて高頻度注文板内で観測される複数イベントを表現し,それぞれの自己励起性および相互励起性を検証するとともに,イベントにおけるマークの大きさがHawkes過程の強度関数に与えるインパクトの大きさについて分析を行う.具体的には,価格の上昇及び下降を伴う約定に加えて,中心価格の変動を伴うビッド及びアスク注文を4系列のイベントとして定義し,そのときの取引数と注文数をマークとしたマーク付き4次元Hawkes過程を提案している.そしてこのモデルを東証一部上場の複数銘柄に当てはめ,それぞれのパラメータ推定を行う.次に,推定されたパラメータを利用して時系列と銘柄間の比較を行い,各イベントの自己励起性,及びイベント間の相互励起性についての特徴を明らかにする.さらに,マークがHawkes過程の強度関数に与える影響の有無とその大きさについて分析を行う.

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