為替では,取引の活況具合に応じて,取引の発生が疎らな時間帯,密になる時間帯に分かれる為替取引のクラスタ現象や,相場でのリスクの増減に応じて,価格の変動が小さく推移する時間帯,急激な価格の上下変動が持続する時間帯に分かれるボラティリティクラスタリング現象が確認でき,相互に関連しあう様に見える.本論文では,為替ティックデータを用いて,指値や取引の発生間隔の粗密,量の増減,価格変動の増減の相互の関係を明らかにしたい.
Cont et al.(2014)は,時系列データをもとに,指値注文の価格変動と量の関係を調査し,Shibata(2006)は,マーク付点過程データを用いて,取引の発生間隔と価格変動の関係を調査する.我々は,指値や取引の発生間隔と価格変動,量といった変量の関係に興味があるので,Shibata(2006)のモデルとCont et al.(2014)のモデルを統合することで,これらを同時に捉えることのできるモデルを構築した.
そして,為替の取引発生の粗密から得られるクラスタ区分上で,指値や取引の発生間隔,量,価格変動の関係を調査した.本論文の貢献は,クラスタ区分上で,指値や取引の発生頻度と価格変動,価格インパクトなどの要約量の間の相関を確認したこと,時間軸を均等に区切ることで得られる30分等間隔の区分上では隠れて確認できない価格変動に伴う価格インパクトやデプスなどの動きを視覚化したこととなる.
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