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地下水学会誌
Vol. 54 (2012) No. 1 P 25-37

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http://doi.org/10.5917/jagh.54.25

短報

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に続いて発生した津波は東日本沿岸に甚大な被害をもたらした。本稿では,千葉県旭市沿岸部における地下水利用への津波の影響について,地震2ヶ月後に住民への聞き取り(67件)と水質測定(50地点)による調査をおこなった結果を報告する。
旭市に到達した津波は最大7.6mと推定され,地上構造物が大きな被害を受けた。ひざ丈以上の津波を被った全ての井戸で,揚水ポンプの流失等により地震後に地下水利用が一時的に困難となった。しかし,67本の調査井(浅井戸)中,井戸本体に破損があったのは3本のみで,多くの井戸で地震後1週間以内に,また,地震から2カ月後にはすべての井戸で,地下水利用が再開されていた。本地域の浅井戸は地上構造物に比べて地震や津波に強く,ほとんどの井戸で何らかの揚水手段さえ確保できれば,地震直後から地下水利用が可能であったと推定される。
津波を被ったほとんどの井戸で電気伝導率が1,000μS/cmを超え,海水の混入による地下水質の変化が広範囲で認められた。海水は地表面から浸透すると同時に井戸を介しても地下に浸透したと推定された。海水混入率は局所的に大きく異なり,津波の高さの影響を強く受けているほか,微地形の影響を受けていることが示された。また,地震後の揚水が海水を含んだ地下水を除去し,水質の回復を促進していることがわかった。
塩水化した地下水は,長期的には自然に淡水と入れ替わると推測されるが,これ以上の塩水化を防ぎ,より早く淡水に回復させるためには,地表面の塩分の除去とともに,注意深いモニタリングをしながら地下水利用を継続することが効果的であることが示唆された。

Copyright © 2012 公益社団法人 日本地下水学会

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