地形,地質,気象条件ならびに土地利用形態(サトウキビ栽培を主とする農地が広く展開)が相似する琉球列島の炭酸塩岩島嶼(喜界島と宮古島)を対象に,地下水水質,使用された化学肥料の種類と量,ならびに不圧地下水湧水口におけるCO2濃度を調べた結果から,森林地域に対する農耕地域の炭酸塩溶解速度の差異,原因,溶解過程でのCO2大気放出の可能性を検討した。その結果,農耕地域では主に,化学肥料硫安に由来するアンモニアの硝化過程で生じるH+と,その生成物である NO3-とSO42-が土壌中の塩基を対イオンとして溶脱させることに起因する土壌の酸中和能力の低下により,炭酸塩が溶解される過程で炭素の一部がCO2として大気放出されることが明らかとなった。また,農耕地域における炭酸塩の溶解速度は森林地域に比べ平均1.7倍,最高2.3倍程度,農耕地域における炭素放出量は喜界島で27.4,宮古島で15.8 tC km-2 y-1と試算された。