2018 年 60 巻 2 号 p. 143-156
著者は地表水-地下水間での相互作用を考慮した統合型水文生態系モデルNICE(National Integrated Catchment-based Eco-hydrology)というプロセス型モデルを開発し,この相互作用が周辺域の水・熱・物質循環,生態系,及び生物地球化学へ非線形的に及ぼす影響を評価してきた。本稿では,釧路湿原,霞ヶ浦,首都圏,中国でのNICEの具体的な適用事例を通して,地表水-地下水相互作用が様々な側面から果たす役割を論説した。モデルを含む複数の手法の統合的利用を通したこの相互作用の時空間的な評価精度の更なる高度化によって,個別対応策では解決が困難であった複合的な環境汚染(水循環及び熱環境に及ぼす影響,物質循環及び植生変化に及ぼす影響,生物地球化学的循環に及ぼす影響)への対策に大きく寄与することが可能であると考えられる。