地下水学会誌
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論説
わが国の山岳地域における最近の水文学研究
鈴木 啓助
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2019 年 61 巻 3 号 p. 207-215

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抄録

山岳地域では,水文学に関する降水量や降積雪量などのデータが極めて不十分である。そこで,この課題に取り組む研究の試みを紹介する。山岳地域では降水量のデータが不足しているため,流出高が降水量を上回るという水収支上の矛盾が起こってしまう。降雪としてもたらされる冬季降水量の直接観測は現状では困難であるが,雪氷化学的手法や航空レーザー測量などの間接的方法によって算定することができる。さらには,山岳地域での融雪はある時期に集中して起こることから,融雪流出高から流域冬季降水量を見積もる例を紹介する。これにより,山岳地域における降雪量の長期変動についての検討が可能となり,中部山岳地域の上高地梓川流域では1945年から最近まで降雪量は統計的に有意に増加傾向にあることを示す。

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© 2019 公益社団法人 日本地下水学会
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