陰イオン交換基として第四級アンモニウムカチオン-N(CH3)3+を有する市販の陰イオン交換樹脂カラムを用いて,亜ヒ酸-ヒ酸分離手法に関する研究を行った。そして,無機ヒ素の価数分離を行う際の最適条件の選定及び共存する陰イオンの影響について実験的に検討した。亜ヒ酸とヒ酸の第一解離定数に基づいた計算によって,ヒ素(As)の価数分離に最適な検液のpHは4.3~7.1と見積もられた。このpH 範囲内に調整された検液を本カラムに通液すると,亜ヒ酸は陰イオン交換樹脂に吸着されないが,ヒ酸は吸着されるため,検液中のAs を適切に価数分離できることが実証された。また,陰イオン交換樹脂に吸着したヒ酸は,HCl あるいはHNO3の使用によって容易にほぼ全てを回収することができた。さらに,As の回収率に及ぼす共存陰イオンの阻害影響の強さは,CH3COO-<<Cl-<NO3-<SO42-であることを明らかにした。本研究で提案する亜ヒ酸-ヒ酸分離手法は,本試験条件において,実験誤差6%程度で亜ヒ酸及びヒ酸を良好に分離回収できることが示された。