複数水源を有する水田灌漑地域における地下水取水の実態を,愛知川扇状地を例に整理し,地下水取水量の規定要因と地下水取水のあり方を考察した。地下水は受益地の送配水管理を行う土地改良区と末端分水工掛内の水管理を行う農家や水利組合による二つの管理主体により取水されている。受益地全体における地下水利用は地表水取水量自体の不足を補うとともに,気象条件による地表水取水量の変動を補完していること,特に分水工取水強度が十分でない末端分水工掛では,降水量や栽培管理状況に応じた揚水機管理によって便利な水として地下水を利用していることを示した。適切な地下水取水のためには土地改良区と水利組合の分担・連携が重要である。