地下水学会誌
Online ISSN : 2185-5943
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63 巻, 3 号
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特集「地下水と農業の関わり」
技術報告
  • -愛知川扇状地を事例として-
    中村 公人, 堀野 治彦, 松澤 拓海, 吉岡 有美, 濱 武英
    2021 年 63 巻 3 号 p. 105-118
    発行日: 2021/08/31
    公開日: 2021/09/23
    ジャーナル フリー

    複数水源を有する水田灌漑地域における地下水取水の実態を,愛知川扇状地を例に整理し,地下水取水量の規定要因と地下水取水のあり方を考察した。地下水は受益地の送配水管理を行う土地改良区と末端分水工掛内の水管理を行う農家や水利組合による二つの管理主体により取水されている。受益地全体における地下水利用は地表水取水量自体の不足を補うとともに,気象条件による地表水取水量の変動を補完していること,特に分水工取水強度が十分でない末端分水工掛では,降水量や栽培管理状況に応じた揚水機管理によって便利な水として地下水を利用していることを示した。適切な地下水取水のためには土地改良区と水利組合の分担・連携が重要である。

論文
  • -アルコール類に関する急性毒性評価-
    杉田 創, 駒井 武
    2021 年 63 巻 3 号 p. 119-135
    発行日: 2021/08/31
    公開日: 2021/09/23
    ジャーナル フリー

    既往の研究において,石油系炭化水素の土壌汚染評価手法の開発を目的として,ガソリン等の主成分であるアルカン類の発光バクテリアに及ぼす急性毒性影響が評価された。一方,アルカン類は微生物分解によりアルコール類を生成することが知られている。そこで,本研究では,アルコール類の発光バクテリアに及ぼす急性毒性影響について調べるとともに,生成したアルコール類共存下でのアルカン類の土壌汚染評価に及ぼす影響について検討を行った。アルコール濃度100 vol%の検液の急性毒性影響の強さは,メタノール<エタノール<2-メチル-1-プロパノール<2-プロパノール<1-プロパノール<2-メチル-2-プロパノール<1-ブタノール≒2-ブタノールであった。この結果は,発光バクテリアに及ぼす急性毒性影響は,直鎖アルコールでは炭素数が高いほど強く,また分岐型よりも直鎖型のアルコールの方が強いことを示している。一方,本研究で試験されたアルコール類は低濃度(検液中の濃度で1 vol%)の場合,発光バクテリアに対して急性毒性影響を及ぼさないことが示された。本研究の結果から,汚染土壌から石油系炭化水素を抽出する溶媒としてメタノールを使用する本手法においては,汚染土壌中にアルコール類が低濃度で存在していたとしても,アルカン類など石油系炭化水素の土壌汚染評価に影響を与えないと考えられる。

  • 梁 熙俊
    2021 年 63 巻 3 号 p. 137-149
    発行日: 2021/08/31
    公開日: 2021/09/23
    ジャーナル フリー

    別府温泉の泉質変化と温泉水の水質の鉛直分布から流動系を推定するため,52ヶ所の温泉井を対象に階層的クラスター分析,因子分析,水文学的解析を行った。本地域の泉質はG1, G2a, G2b, G2c, G3と5つのグループに分けられ,G1とG2aは亀川地熱域に,G3とG2cは別府地熱域に主に分布し,G2bは両領域に分布する。各グループの泉質の平面分布は過去の研究から推定された温泉水流動経路と概ね一致するが,別府駅周辺では,1980年代と比べ,Cl/HCO3の濃度比が減少し,泉質変化が認められた。泉質の鉛直分布から標高によって温泉水の流動系が異なることが推定され,さらに別府地熱域の海岸付近の温泉井では海水の混合が認められ,海水の混合率は12%と見積もられた。

資料
  • 梁 熙俊, 柴田 智郎
    2021 年 63 巻 3 号 p. 151-157
    発行日: 2021/08/31
    公開日: 2021/09/23
    ジャーナル フリー

    Transition in effective precipitation, land use change and discharge of hot spring reveals the long term changes in the unconfined groundwater level in the southern Beppu volcanic fan from 1971 to 2019. The unconfined groundwater level was periodically fluctuated between 40 m and 50 m above sea level and indicated the maximum value in October or November and the minimum value in April or May. Annual effective precipitation was related to the maximum groundwater level in each year and it had decreased 0.7 mm every year. The urban area was slightly increased from the 1970s to 2016, but it was not a factor to decrease the unconfined groundwater level. The hot spring yield was inversely related to the maximum groundwater level in each year and it had increased 7.9 mm/y, which is approximately 11 times higher than the effective precipitation. Thus, it could conclude that the increase of the hot spring yield mainly affected the decline of the unconfined groundwater level from 1971 to 1999.

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