2025 年 67 巻 3 号 p. 285-291
洪水時の河川堤防の破堤メカニズムのうち,パイピングによる破堤は直前まで予兆が無く,突然破堤に至る危険な破壊形態である。洪水中に密かに進展するパイプはその断面は数mmから数cm程度と小さいため,物理探査で検知することも現状では困難である。本稿では,パイプ周辺地盤の3次元的な地下水の流れとパイプ先端部地盤の崩壊およびパイプ内流れによる土砂運搬が関連したダイナミクスであるパイピング現象のメカニズムとその予測について,技術の現状を述べたものである。またパイピングが発生する水位条件だけでなく,パイピングの進展速度と破堤までの時間を考慮することの重要性も指摘した。