日本地下水学会会誌
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地すべり地における1m深地温測定による地下水流脈調査法について-第1部
竹内 篤雄
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1980 年 22 巻 2 号 p. 73-101

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抄録
地すベり活動に直接大きな影響を与える脈状地下水の存在位置と規模を推定する一方法として,流動地下水温と平常浅層地温との差を利用した浅層地温測定による地下水流脈探査法の可能性について検討した.
第1章では現地観測結果に基づいて水脈のモデルを橿築し,非定常三次元熱伝達式を建て,それを差分法により数値解折した.ついでその結果を現地観測結果と対比し,そのモデルと熱伝達式の妥当性を示した.さらに浅層地温測定によって地下水流脈存在による平常浅層地温の乱れは十分に握えられることを示した.
第2章では浅層地温測定方法と同調査法の適用時期および調査結果の再現性を中心にのベてある.測定方法は温度差の小さい地温を測定するに適した測定器を用い,郵定は測温体埋設後10分経てから行なうことにした.次に流脈規模を推定するに必要な測点間隔と流動地下水と平常1m深地温との最低必要温度差について検討し,半径5~10mの流脈を探査するには5~10mの測点間隔と±2.5℃以上の温度差が必要であることを示した.三番目に同調査法は流動地下水と平常1m深地温との温度差を利用したものであるため,その適用期間を求める必要がある.現地調査・理論計算によるとそれは9月と3月を中心とした期間であることが示された.最後に同調査結果の再現性は十分にあることを現地調査によって示した.
第三章では測定値に関与する諸種の因子が検討された.日変化はlm深で地温を測定する限り,測定値への影響は無視できるが,年変化は長期調査を行なう場合はその影響がでるので,必要に応じてそれを補正する.地質の相違による影響は殆んどない.地形の影響は標高差350m程度までは測定値に影響をおよぼさない.さらに地況は±2℃もの影響をおよぼす場合があるので,その補正方法を提案した.
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