地下水学会誌
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地殻表層付近のヒ素の挙動と地下水汚染の拡大機構
益田 晴恵
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2000 年 42 巻 4 号 p. 295-313

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抄録

地殻表層付近の水とその周辺環境におけるヒ素の挙動を概観し.ヒ素汚染地下水の形成過程を説明した.
ヒ素は.一次的には地殻深部から熱水や火山ガスなどに伴って還元的な物質として供給される.それが.熱水からの直接流入やヒ化鉱物や硫化鉱物の風化作用を含む酸化的化学反応にともない.一部は環境水中へ溶出する.環境水中のヒ素は懸濁粒子に吸着されたり生物遺骸として堆積物中に固定される.堆積物中に固定された物質からの脱着反応と分解反応は地下水中の溶存ヒ素を規制する要因となる.地下での生物化学的作用もヒ素の挙動を規制する重要な要因である.
各地で問題になっているヒ素汚染地下水の汚染拡大の要因は単一ではなく.さまざまな現象が組み合わさったものであることが多い.ヒ素は自然循環過程で環境基準を超える濃度を環境水中にもたらすが.人為的作用は汚染の拡大に寄与する.特に.人為的汚染物質の放出は.局所的に高濃度のヒ素汚染層を形成し.その後長期間にわたって汚染を拡散する.

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