抄録
本研究では,医療施設に勤務する看護師が,認知症高齢者の看護を行ううえで困難と意味づけている体験の共通概念を抽出し,構造化を行うためにグラウンデッド・セオリー・アプローチにより,質的記述的研究を行った.病院・介護老人保健施設・介護療養型医療施設の看護師27名に半構成的インタビューを実施した結果,中核カテゴリーとして【目が離せない人に対する許容】,主要なカテゴリーとして【目が離せない人との遭遇】【見守りの必要性】【看護業務の緊迫化】 【家族からの応じられない要望】を抽出した.構造として,【目が離せない人との遭遇】と【家族からの応じられない要望】を契機に,【見守りの必要性】と【看護業務の緊迫化】が生じ,患者を受け入れるためには看護師側の内面のプロセスとして【目が離せない人に対する許容】が必要であり,認知症高齢者の危険で予測がつきにくい状況を許容していくプロセスが認められた.また,【見守りの必要性】から,看護業務上の負担による倫理的課題が起こりやすい状況であることも示唆された.