老年看護学
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看護・介護の協働から生まれる転倒予防の試み : 転倒を繰り返した認知症高齢者を通して
山本 恵子宮腰 由紀子
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2007 年 11 巻 2 号 p. 74-83

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抄録

本研究では,高齢者施設における転倒予防に有効な職種間協働のあり方を明らかにすることを目的に,老健施設に入所中で転倒を繰り返す重度の認知症高齢者A氏(92歳女性)と家族に協力の承諾を得て,転倒予防への取り組みを分析した.職種間協働のあり方では,職種間の共通認識形成に焦点を当て,転倒予防策における職種ごとの責任と守備範囲を明確にするために,全職員が参加する検討会議を提起し,研究者も助言者兼ファシリテータとして参加した.会議では,A氏のケアに関する情報交換,職種ごとの役割認識,新予防策の立案を行い全職員の意思統一を諮った.新予防策を2か月間実施した結果,実施前は2週間で6回転倒していたA氏が,新予防策実施直後に2回転倒した以外には転倒せず経過し退所できた.副次的に,新予防策実施中は施設全体の転倒事故件数が,他期間に比して半減する効果も認められた.職種間の共通認識形成に焦点を当てた職種間協働は,各職種の役割の明確化,転倒原因の特定,転倒予防に関する知識・認識の職種間補填等が行われ,転倒予防に有効であることが示唆された.

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