抄録
本研究は,認知症の症状発現から診断されるまでの高齢者の家族の体験を明らかにすることを目的とした.訪問看護ステーションを利用している認知症と診断された高齢者と同居し,介護している家族3名に,半構成面接を行い質的記述的研究方法を用いて分析を行った.分析の結果,認知症の症状発現から診断されるまでの高齢者の家族の体験は,≪以前の高齢者との比較で認知症の症状に気づく≫≪診断までの手はずを整える≫≪高齢者の自尊心を傷つけないよう配慮する≫≪第三者から理解されたい≫≪高齢者の変化に戸惑う≫≪高齢者の気持ちに寄り添いたい≫≪自らの役割を再認識する≫≪自分の存在する意味の喪失に対する不安≫≪高齢者の症状にあった介護方法を模索する≫という9つのカテゴリーに分類され,カテゴリーの関連性を図式化した.今後は,社会や家庭内から孤立しがちな認知症発症初期の高齢者家族の思いを傾聴し,できるだけ早期に受診ができるような地域ケアシステムの構築が求められる.また,家族には認知症高齢者の生き方を反映した具体的な関わり方の提示や,介護者としてのロールモデルの存在が重安であると考えられる.