2009 年 13 巻 2 号 p. 80-86
模擬患者を活用した演習の学びが老年看護学実習にどのように影響しているかを明らかにし,老年看護学に模擬患者を導入する意義について検討した.学生は,老年看護学実習前に模擬患者の演習の中から,高齢者の身体的特徴や高齢者の想い,高齢者独自の生き方を想起し,高齢者と接する態度や対象者の把握,個別のケアや自己決定への支援の課題を明確にした.その結果,老年看護学実習において学生は,模擬患者との場面と受け持ち患者とを対比しながらコミュニケーションの方法を工夫することや高齢者を尊重した態度の実践につなげることができ,高齢者との信頼関係の構築につながり,高齢者の個別に応じた看護や自己決定への支援に役立ったことが示唆された.これらのことより,老年看護学教育において模擬患者を導入した演習は,老年看護学実習に影響していることが明らかとなり,老年看護学に模擬患者を導入する意義が確認できた.