抄録
医療場面における,認知症患者のその人らしさを支える看護実践を明らかにし,構造として示すことを目的に,認知症専門病棟の看護師へ参加観察と半構造化面接を行った.得られたデータを,複雑な要素の意味や繋がり,関係を空間的に示すことで,全体の構造的な理解を可能にする質的統合法(KJ法)で分析した結果,医療場面におけるその人らしさを支える看護実践を,本人を【置き去りにしていないか自問自答】しながら,【想定外のパワーの発見を期待】し【医学的かつ了解・受容可能な方法模索】するなかで,【快適な生活を創造しようと志向】が変化し,それに応じて【独自世界の支援方法を模索】し方法を獲得した結果,本人にとっての【well beingを知覚】し,さらに【自身も喜びを実感】するという構造として示した.この構造は,その人らしさが脅かされやすく看護師も困難を感じるとされる医療場面において,患者のその人らしさを実現し,看護師もやりがいを見出す手がかりとなる可能性が示唆された.