抄録
本研究の目的は,ケア実践者が認識する認知症高齢者の「拒薬・拒食・拒絶」の現状を明らかにすることである.介護老人保健施設の看護職と介護職を対象とし,質問紙調査により得られたデータを質的に分析した,その結果,「拒薬・拒食・拒絶」の現状として,両職種とも〈食べることに対する関心の低下〉がもっとも多く,さまざまな事由によって食べることがむずかしい現状が明らかになった.よい反応を得られたケアは,職種による方法の違いがあり,看護職では〈物的環境を整える〉ことが多く,〈人的環境を整える〉ことは介護職に多くみられた.「拒薬・拒食・拒絶」は,認知症高齢者の意思の表れであり,行動は拒否という形であるが,そのなかにはさまざまな思いが包含されている.認知症だからとひとくくりに考えるのではなく,1人ひとりの思いを大切にかかわっていくことが,「拒薬・拒食・拒絶」の現状を少しでも和らげるケアにつながると考える.