2022 年 27 巻 1 号 p. 66-72
本研究の目的は,農村地域の心不全を抱える高齢者が農作業継続を望む要因を明らかにすることである.心不全を抱えながら農作業に従事している7人を対象に半構造的インタビューを実施し,質的記述的に分析した.その結果,【自分が望む生活を送りたいという思い】【これが自分の運命だという自覚】【社会的役割や地域での居場所づくりという意味】の3の大カテゴリーが生成された.農村地域の高齢者にとって,農業は【自分が望む生活を送りたいという思い】をかなえる手立てとなっていた.高齢者は【これが自分の運命だという自覚】の下,農業とともに生活を送ってきた.また,農業を通した家族のつながりや他者との交流は,【社会的役割や地域での居場所づくりという意味】をなしてきた.心不全を抱えながらも自分らしい生活の実現に向け,農作業継続を支えていくことや,地域社会とのつながりや居場所をもち続けられるよう支援していく必要があると考えられた.