2022 年 27 巻 1 号 p. 80-87
本研究の目的は,終末期高齢がん患者のその人らしさを支える看護実践を明らかにすることである.
緩和ケア病棟看護師5人を対象に半構造化面接を行い,質的統合法(KJ法)で分析した.
終末期高齢がん患者のその人らしさを支える看護実践は,患者の言葉や姿といった【揺るがない側面への着目】を基盤とし,【患者が望む生活の実現に向けた調整】と並行して,【患者の力でやり抜く調整:生活環境を整える】と【患者の力でやり抜く調整:行動を見守る】の両面から行われていた.一方,患者の病状や老いの進行に伴い,患者が貫いてきたことがかなわなくなる局面では,それまでの【患者の力でやり抜く調整】から転じて,【看護の転換:他者の力を借りるという考えを後押しする】を行っていた.また,これまでの長い人生経験のなかで大事にしてきた患者の【価値観を受け止め,意をくむ】を行いつつ,看護師がとらえた【患者らしさを家族と共有する】ことによって,その人らしさを支えていた.がんや老いが進む状況においても終末期高齢がん患者の揺るがない側面に着目していくことで,その人らしさを支え続けることは可能であることが示唆された.