2023 年 28 巻 1 号 p. 100-108
本研究の目的は,高次脳機能障害をもつ高齢者が在宅生活においてどのような体験をしているのかを明らかにすることである.参加者は,高次脳機能障害を発症し入院治療の後,在宅で生活する65歳以上の高齢者11人である.参加者に対して半構造化面接を実施し,質的記述的に分析した.その結果,【できていたことができなくなり歯がゆい】【身体の衰えを実感する】【周りの人に理解してもらえない】【今後のことを想像して憂慮する】【記録することを続ける】【いまの自分にできる対処をする】【自分に価値を感じる】【身近な人を気兼ねなく頼る】【目標に向かってあきらめない】の9つのカテゴリーが抽出された.高次脳機能障害をもちながら在宅で生活する高齢者は,いままでできていたことができなくなり自信を喪失しやすく,社会的にも精神的にも孤立に陥りやすい状況にあるといえる.看護職は高次脳機能障害をもつ高齢者のいまできていることに目を向けて強みを生かせるように関わる必要がある.