抄録
痴呆性老人,特に病状が重度で他者に依存せざるを得ない対象にとって,ケアの質がそのQOL(Quality of Life:生活の質)にもたらす影響は大きく,両者は不可分の関係にある.本研究では,痴呆ケアの体系化を試みる第一段階として,看護職の認識する「痴呆性老人のQOLを高めるケア技術」を明らかにすることを目的として質問紙調査を行った.調査の対象は,老人性痴呆疾患治療・療養病棟に勤務する看護職で,有効回答数は509 (有効回収率80.7%)であった.因子分析の結果,『患者に合わせた対応』『必要な処置・ケアの遂行』『孤立化の回避』『家族関係の維持』『存在の尊重』『混乱させない対応』『愛着を生かした対応』『全身管理』『安心感の補強』の9つのケア技術が明らかとなった.それらのケア技術の構造について,Maslowの欲求階層説をもとに考察を加えた.