抄録
授乳婦の乳頭柔軟性を評価することは,母乳育児支援や人工乳首の研究開発において有用である.従来よりも簡便かつ安全に評価可能な手動圧縮式乳頭反力測定システム(Nipple Flexibility Assessment System)を新たに開発し,その評価を行った.産後1~2ヵ月の授乳婦を対象として,乳頭直径を基準に力センサを取り付けた圧子で乳頭を圧縮し,反力を測定した.すべての参加者において,痛みや不快感はなく安全に測定された.反力の時間変化から生体組織のもつ粘弾性の特徴が示された.粘弾性を考慮した分析の結果,圧縮率50%における圧縮保持0秒時点と2秒時点の反力値が柔軟性の評価指標として有用であることが示された.授乳婦の乳頭柔軟性データを蓄積することで,出産経験や年齢,産後経過日数,授乳状況,乳頭トラブルの発生頻度などとの関連を明らかにするとともに,人工乳首の研究開発での活用が期待される.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→乳頭柔軟性は授乳において重要な因子ですが,客観的な測定手法が確立されていませんでした.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 乳頭柔軟性の評価によって,母乳育児支援や人工乳首の研究開発に貢献したいと考えています.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→乳児の吸着に影響する乳輪部を含めた評価方法の技術開発を期待しています.