地理空間
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静岡県榛原郡川根本町における高級茶の生産と流通
深瀬 浩三
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2008 年 1 巻 2 号 p. 142-159

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抄録

 本論文は,煎茶の茶産地として発展した静岡県川根地域を対象に,川根茶の生産と流通を考察し,地域ぐるみの取組みによる山間地の高級茶生産の継続的発展を明らかにした。川根地域の茶業は,わが国の他の茶産地と同様に,明治期から海外への茶の輸出拡大にともなって発展した。1964 年には茶業界で初の全国農業祭天皇杯を受賞したことをきっかけに,全国に高級茶「川根茶」の名を馳せることになった。その後も茶生産者が,茶品評会で数々の優等賞を受賞することにより,高級茶産地としての知名度を誇示し続けてきた。また,川根茶が茶市場に出回りにくいことや,消費者への通信販売を中心とした販売活動によって希少価値が生み出されている。1970 年代以降,伝統的技術を維持する一方で,労働力不足や高齢化,施設投資の軽減を図るために,行政の補助事業を活用した共同製茶工場や農協の再製茶工場の大型化による産地再編が行われてきた。また,行政は今まで生産部門を支援してきたが,川根茶自体の知名度の向上を図るために,地域ぐるみで産地ブランド化にも力をいれている。経営体にとって,労働力(後継者)の確保は大きな課題となり,これは今後の産地の存続に大きく関わる問題である。

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© 2008 地理空間学会
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