抄録
本研究は,リヒテンベルガーによる都市発展に関するデュアルサイクルモデルを手がかに都市再生を捉え直し,都市再生に関する研究の主要な観点を提示するとともに,主要な観点から都市再生研究を概観することを目的とした.その結果,都市再生の概念には,広範な関係主体や取り組み内容,また中・長期的な空間的プロセスに関する現象が含まれていた。こうした都市再生の広義の概念に基づくと,都市再生研究は主要な二つの観点から整理できる。一つ目は,都市再生の時間性に関連する議論であり,空間パターンの背景や要因といった形成プロセスに関する研究への視点である。中・長期的な都市再編の中で都市再生の空間パターンの形成プロセスを扱うものである。二つ目は,都市再生の空間パターンに関連する議論であり,都市空間の機能的変容に関する研究への視座である。都市再生を通じた個別の区域・地区における形態的,社会的,経済的な機能変容に関する研究,再投資を通じた都市空間の再構築に関する議論,さらに政治・社会・経済的側面からみた,都市全体(都市システム上)の機能的な変化についての論考などである。