地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
15 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 伊藤 徹哉
    2022 年 15 巻 1 号 p. 1-23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,リヒテンベルガーによる都市発展に関するデュアルサイクルモデルを手がかに都市再生を捉え直し,都市再生に関する研究の主要な観点を提示するとともに,主要な観点から都市再生研究を概観することを目的とした.その結果,都市再生の概念には,広範な関係主体や取り組み内容,また中・長期的な空間的プロセスに関する現象が含まれていた。こうした都市再生の広義の概念に基づくと,都市再生研究は主要な二つの観点から整理できる。一つ目は,都市再生の時間性に関連する議論であり,空間パターンの背景や要因といった形成プロセスに関する研究への視点である。中・長期的な都市再編の中で都市再生の空間パターンの形成プロセスを扱うものである。二つ目は,都市再生の空間パターンに関連する議論であり,都市空間の機能的変容に関する研究への視座である。都市再生を通じた個別の区域・地区における形態的,社会的,経済的な機能変容に関する研究,再投資を通じた都市空間の再構築に関する議論,さらに政治・社会・経済的側面からみた,都市全体(都市システム上)の機能的な変化についての論考などである。
  • 丸山 浩明
    2022 年 15 巻 1 号 p. 25-48
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー
    多民族国家のブラジルにおいて,各国移民の経済・社会・文化的発展とその要因を明らかにすることは,国民国家の成り立ちを解明する上で重要な研究課題である。ブラジルのオランダ人移民は,その数において圧倒的にマイノリティーであるが,とりわけ園芸農業,畜産業,乳業分野での貢献や活躍ぶりは際だって大きい。本研究は,ブラジルにおけるプロテスタント系の代表的なオランダ系移住地であるパラナ州カストロ市のカストロランダを事例に,移民の歴史や移住地の発展要因を実証的に解明することを目的とした。その結果,「二国間移民協定」に基づく国家的支援,先着同胞移民や宗教団体による移住環境の整備,福音改革派教会を中心に醸成されたオランダ系コミュニティの堅固な連帯意識や植民当初の族内婚による安定した移住地生活が,当該移住地の経済・社会・文化的発展に大きく寄与したことが明らかになった。
  • 秋元 菜摘, 田中 捺希
    2022 年 15 巻 1 号 p. 49-63
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー
    大規模災害への対策では大学が地域と連携することが期待されている。大学は収容施設や電力供給源,学生ボランティアなどの点で重視されるが,必ずしも避難所に指定されていない。本研究では静岡大学浜松キャンパスを事例とし,大学の災害対策や防災教育の現状を踏まえ,今後の改善策を提案する。アンケート・ヒアリング調査の結果,学生には避難所の確認や非常用物資・備蓄の準備,地域との連携などに課題があることが明らかになった。GIS分析では,学生は最寄り避難所ではなく,離れた所属大学への避難を選ぶ傾向があることも明らかになった。今後の防災教育では,ICTを活用して各自に適した情報を入手したり,事前に避難計画を議論したりする機会を設けることが効果的であると考えられる。また,地域連携については,学生が最寄り避難所を確認したり,地域の防災訓練に参加したりすることを大学が後押しするような仕組みの構築も求められるであろう。
  • 静岡県浜松市における取り組みを事例に
    佐野 浩彬, 岩井 優祈
    2022 年 15 巻 1 号 p. 65-78
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー
    本稿では,東日本大震災以降の地方自治体において,津波対策がいかに講じられてきたかを,先進的な取り組みを実施している静岡県浜松市を事例に明らかにした。浜松市では南海トラフ巨大地震に備えて,東日本大震災による被害を受けた自治体等を独自に調査し,法令に基づく津波防災地域づくり推進計画や津波避難計画の策定を全国に先駆けて実施してきた。また,沿岸部への津波防潮堤建設や津波避難施設の整備・拡張といったハード対策,区版避難行動計画や地区の津波避難計画といったソフト対策を,それぞれ,地域の文脈に合わせながら実施してきた。浜松市における津波防災の動向は,公助が主となってその取り組みを推進する一方で,自助と共助の取り組みを意識し,防災計画上の位置づけを明確にしている点において,他の地方自治体における津波対策の展開に参考となると考えられる。
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