抄録
移植民を送出国と受入国の2 国間の関係として捉える従前の移民研究は,多様な日本人の多国間にまたがる移動や移植民の実態を見過ごしてきた。ブラジルの日本人移民研究においても,「南米発展論者」と称される在米邦人や再移住者が日本人植民地の建設に果たした重大な役割が等閑視されてきた。そこで本研究は,アメリカで過酷な排日体験をした在米邦人や再移住者が創設・関与した3 つの移住組織に着目し,そのメンバーや植民事業の特徴を比較検討した。その結果,彼らはブラジルに「カナンの地」を夢みたキリスト者を中心とする熱心な国家主義の信奉者だったという共通点をもつ一方で,アメリカへの移住年代や社会的属性の違いに起因するブラジルでの植民事業に対する理念や目的,方法などに際だった差異が認められることが明らかになった。