2012 年 15 巻 p. 201-220
本稿は,1980年代以降の米国の高等教育財政における個人寄付の拡大要因に迫る上で,資本市場と連邦寄付税制の役割に着目し,実証分析を行ったものである.従来の研究では,米国の高等教育財政における個人寄付の拡大要因として,株価の変動要因が強調されてきた.本稿では,株価と個人寄付が連動する背景には,「評価性資産に対する連邦寄付税制」の構造が寄与しているという仮説を提示し,実証分析を行った.分析の結果,当該制度が制限された時期においては,株価の個人寄付に対する影響力が低下していることが推定された.この結果より,1980年代以降の米国の高等教育財政における個人寄付の拡大においては,株価の変動要因に加えて,「評価性資産に対する連邦寄付税制」が寄与していたことが見出された.