2014 年 17 巻 p. 133-152
本研究では,全国婦聯と彼らが単独で設立した成人大学である全国婦聯管理幹部学院(現中華女子学院(普通本科))に焦点をあて,その設立過程を考察することによって,社会主義を掲げる中国でなぜ女子に限定された高等教育機関が必要とされたのかを明らかにすることを目的とし,国家イデオロギーと高等教育機関設立の関係性の一端を分析する.改革開放政策が始まると,中国共産党は幹部選抜に学歴要件を課すとともに幹部教育の正規化方針を打ち出した.この方針により男性に比べ学歴レベルの低い女性は幹部選抜に不利となった.しかし,全国婦聯は幹部教育正規化を足がかりとして,幹部の再訓練,自らの活動分野の専門知識を持つ女性幹部の育成,さらには女性の就業機会拡大のために女子高等教育機関設立を目指したのである.