本稿の目的は,高等教育の大衆化がもたらす大学生の多様化のうち,特に退学と留年に着目し,その実態と発生のメカニズムを,学部を単位として実証的に検討し,抑制の可能性も視野に入れて考察することであり,その結果明らかになったのは以下の3点である.その結果,以下の3点を明らかにした.第1に,退学と留年を統合的に考察し,4類型に基づく学生の動態の規定要因を析出した.第2に,退学率と留年率の分岐点を探索し,学部がおかれた様々な文脈を考慮しつつ,退学と留年問題に取り組む必要性を,具体的に提示した.第3に,退学と留年に対する教育・学習支援の介入効果を分析する過程で,大学教育の効果研究に用いられる横断的調査の可能性と限界を批判的に検討した.