2022 年 25 巻 p. 197-216
中国では,北京大学や清華大学などの旗艦大学が世界一流水準を目指すと同時に,準旗艦大学も顕著な成長を遂げている.その背景には,学科組織を対象単位とする研究基盤強化支援事業がある.本稿は政策に対する記述的分析をふまえ,データと事例を用いて,学科単位の支援スキームが準旗艦大学の研究力向上に結びつくメカニズムを解明した.その結果,以下の知見を得た.準旗艦大学は獲得した資金パッケージが旗艦大学と差がある状況の中で,資源を一部の学科に集中して,有力学科を効率的に生み出し,特定分野面で旗艦大学との格差を縮小し,世界水準に近づけることを実現した.結果的に,多様性を持つ準旗艦大学は国のイノベーションに寄与している.そうした試みは基盤経費が縮小する日本国立大学に示唆を与えられる.