日本水文科学会誌
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論文
沿岸域における大気及び海水中の二酸化炭素濃度の変動
藤井 智康
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2017 年 47 巻 2 号 p. 107-118

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抄録

大気および表面海水中の二酸化炭素(CO2)の長期的な動態を明らかにするために,2012年および2014年の8月~11月に大阪湾において連続測定を行った。表面海水の水温,溶存酸素濃度(DO), pHおよび大気中のCO2濃度を大阪湾の各地点で連続測定した。海水の二酸化炭素分圧(pCO2)は,測定されたpHと全アルカリ度のデータからCDIACが提供するCO2SYSを使って計算した。大気–海水間のCO2フラックス(放出・吸収量)は,連続測定から得られたデータと神戸空港で測定された風速データを用いて計算した。

結果として,夏季の成層期では,CO2吸収フラックスが高く,大気CO2濃度は低かった。CO2フラックスは,日中の光合成と夜間の分解によって大きく日変化していた。この期間のCO2吸収フラックスの平均値は,0.09 g-C m-2 d-1,大気CO2濃度は397.7 ppmであった。一方,成層が消滅する秋季においては,CO2吸収フラックスの平均値は,-0.04 g-C m-2 d-1,大気CO2濃度は429.9 ppmであった。夏季には大気CO2は海水に吸収され,秋季には表面海水のCO2が大気へ放出するため,大気CO2は秋季が高い値となった。したがって,大気CO2濃度は,大気–海水間のCO2フラックスによって大きく変化する。

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