2022 年 52 巻 3 号 p. 107-121
浅海沿岸域の海底から流出する火山性流体の存在を海上から検出する『地球化学曳航観測システム』を試作した。火山性CO2ガスの海底流出が見られる姫島(大分県)の沿岸海域において,観測システムの安定動作の確認と火山性流体流出検知能力の評価を行ったところ,海底ガス湧昇域内において一般的な外洋海水のDIC濃度を上回る溶存全炭酸(DIC)濃度を観測することに成功した。観測海域では海水のDIC濃度が増加するとδ13CDICの値は火山性CO2の同位体組成に向かって変化する関係性のあることから,本観測システムで火山性流体に由来するガスの海底流出を海上から捉えることができたと考える。DIC以外に酸化還元電位にも有意な変化が現れ,海底ガスに含まれるH2Sが海水に溶けているのを検知したとして説明可能である。