国際ビジネス研究
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研究論文
中小企業国際化における外国人労働者
─マルチ・ケース・スタディを通じて─
ソリンガ
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2022 年 14 巻 1 号 p. 1-23

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抄録

本稿の目的は、海外事業展開を行う中小企業における、外国人労働者(高度人材・技能実習生)の活用現状を国際経営的な観点から検討することである。すなわち、海外進出に取り組む中小企業における外国人材がどのような役割を果たすのかを定性研究事例分析によって明らかにする。日本では人口・労働力の減少という問題に対処するため、ますます多くの外国人労働者が企業に受け入れられている。多くの外国人労働者は十分でない労働環境の中で非熟練労働者として雇用されているが、国際化を進める中小企業の中には、海外への市場拡大戦略の一環として、高度な知識や技能を持つ外国人材の育成に取り組んでいる企業もある。

本研究は、ケース・スタディーを通した定性的研究方法を用いて、海外進出事業を円滑に遂行するために日系中小企業がどのように外国人労働者を管理育成・活用しているのかを明らかにするものである。調査対象は、東北地域の13社である。その上、二年間で、密度の濃いインタビュー調査と参与観察を通じて、外国人労働者による海外進出の現象として日系中小企業3社に絞って、プロセス調査も行った。具体的には、中小企業の国際化のために活躍している外国人労働者は、技能実習生(TI)、self-initiated expatriate(SIE)と帰国外国人留学生(FIG)の3種類に分けられる。プロセススタディを分析したところ、海外進出に取り組む中小企業における外国人材の二つの役割「海外活動の触媒」と「接着剤」が浮かび上がった。

本研究は、国際経営(IB)、特に国際化プロセス理論と人的資源管理(HRM)の統合に位置づけられる。さらに、経験が限られた中小企業における外国労働者の扱い方についても、新しい可能性を示した。

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