近年、新興国発の多国籍企業(EM-MNEs)は、グローバル市場においてプレゼンスを急速に高めている。本稿は、これらの企業の異質な国際化プロセス、いわゆる「二重の国際化」に焦点を当て、どのような戦略が用いられるかを検証することを研究目的とする。そこで、中国のアリババ・グループを代表事例として取り上げ、先進国と新興国市場における当該企業の国際戦略についてそれぞれ考察した。その結果、EM-MNEsが二重の国際化を行う際、先進国市場においては、資源探索型の戦略志向が強く、また、市場の異質性を考慮した適応化戦略を用いて対応するのに対し、母国と類似性の高い新興国市場においては、資源活用型の戦略志向が強く、標準化戦略を駆使するという結論を導き出した。