2023 年 15 巻 1 号 p. 27-40
本研究は、多国籍企業において「生産技術システムとグローバル情報システムの移転プロセスにおける①相互作用はどのようなものか、②促進条件は何か」を明らかにしようとするものである。本研究ではグローバル情報システムをERPシステムと定義して議論を進めていく。先行研究ではERPシステムをグローバル統合して導入するか、それともローカル適合で導入するかの議論が行われている。特に日本の多国籍企業においては、日本的経営・生産技術システムとERPシステムが不適合な関係であることが指摘されている。その中で日本の強みである現場改善のような生産技術システムとERPシステムの持つ優位性を両立の可能性について議論されている。そのため、本研究ではこれら2つの生産技術システムの移転とグローバル情報システムの移転における日本のものづくり企業についての探索的な事例研究を実施した。
これまでの既存研究では本国親会社と海外子会社の移転方向に着目し、生産技術システムの移転に限定して議論されている。しかし、本研究では生産技術システムの移転方向の議論に対して新たな分析枠組みとしてグローバル情報システムの視点を加え、ダイナミックスに分析した。そうすることでグローバル情報システムが生産技術システムの移転を促進させる相互作用について明らかにした。また、それらを促進させる条件についても明らかにしたことは本研究における重要な貢献といえる。