抄録
本稿は、本国本社から海外子会社への出向者(海外派遣社員)の増減と海外子会社のパフォーマンスの関係を定量的分析から明らかにした研究である。これまでの既存研究では、海外子会社のパフォーマンスを上げるために海外派遣社員を増やすべきなのか、減らすべきなのかについて、明確な結論が出されていなかった。本稿はその原因が、既存研究において「複数年度のデータを用いた海外子会社の変化に対する定量的分析が行われていなかったこと」、「海外派遣社員が海外子会社のパフォーマンスに与える効果のタイムラグが考慮されていなかったこと」、「海外子会社のビジネスライフサイクルが考慮されていなかったこと」にあると考え、これらを踏まえた上で日本企業の海外子会社を対象とした定量的分析を行った。その結果、ビジネス成長期という条件下において、海外派遣社員の増加率と海外子会社のパフォーマンスには正の相関があることが明らかになった。また、海外派遣社員の増加には、タイムラグを持って現れる効果があることも明らかになった。